Qraft (クラフト)

QR コードはこれからどう進化するのか - 次世代規格と新しい使い方

30 年間変わらなかった規格が動き始めた

QR コードは 1994 年の発明以来、基本的な規格がほとんど変わっていません。バージョン 1-40、4 段階の誤り訂正、3 つのファインダーパターン。この安定性こそが世界標準として普及した理由ですが、30 年の間に技術環境は大きく変化しました。スマホのカメラは数千万画素に達し、通信速度は 5G で数 Gbps に到達し、AR (拡張現実) が実用化されています。

こうした技術進化を背景に、QR コードの次世代規格や拡張技術が登場し始めています。既存の QR コードを置き換えるものではなく、特定の用途に特化した「進化形」です。

rMQR - 細長いスペースに収まる長方形 QR コード

2022 年にデンソーウェーブが発表した rMQR (rectangular Micro QR) は、従来の正方形ではなく長方形の QR コードです。横長や縦長の形状を取れるため、従来の正方形 QR コードが収まらなかった細長いスペースに配置できます。

具体的な用途として、試験管のラベル、ケーブルの識別タグ、薬のパッケージの側面、チケットの端など、幅が限られた場所が想定されています。バージョンは R7x43 から R17x139 まで 32 種類あり、最小サイズは幅 7 モジュール × 高さ 43 モジュールです。格納できるデータ量は通常の QR コードより少なめですが、細長いスペースに収まるという利点が、医療や物流の現場で高く評価されています。

JAB Code - カラフルな多色 QR コード

JAB Code (Just Another Barcode) は、ドイツのフラウンホーファー研究所が開発した多色 2 次元コードです。従来の白黒 2 色ではなく、最大 8 色を使ってデータを格納します。2 色なら 1 モジュールあたり 1 ビットですが、8 色なら 1 モジュールあたり 3 ビットを格納でき、同じ面積で約 3 倍のデータ容量を実現します。

カラフルな見た目はデザイン性にも優れており、ブランドカラーを活用したマーケティング用途が期待されています。ただし、色の識別精度はカメラの性能や照明条件に依存するため、白黒の QR コードほどの読み取り安定性はまだ確保されていません。現時点では研究段階の技術ですが、カメラ性能の向上とともに実用化が進む可能性があります。

不可視 QR コード - 目に見えないコードの可能性

赤外線インクや紫外線インクで印刷された「不可視 QR コード」の研究が進んでいます。人間の目には見えませんが、特殊なカメラやスマホの赤外線センサーで読み取れます。製品のデザインを損なわずに QR コードを埋め込めるため、高級ブランド品のパッケージや美術品の管理に適しています。

偽造防止への応用も期待されています。通常の QR コードは簡単にコピーできますが、不可視インクで印刷された QR コードは、特殊な印刷技術が必要なためコピーが困難です。医薬品の真贋判定、高額紙幣の偽造防止、ブランド品の正規品証明など、セキュリティが重要な分野での活用が見込まれています。

AR 連携 - スキャンした先に広がる 3D の世界

QR コードと AR (拡張現実) の連携は、すでに実用化が始まっています。QR コードをスキャンすると、スマホの画面上に 3D モデルが表示される仕組みです。家具メーカーが商品カタログに QR コードを印刷し、スキャンすると自分の部屋に家具の 3D モデルを配置できるサービスが登場しています。

教育分野では、教科書の QR コードをスキャンすると、人体の臓器や分子構造の 3D モデルが表示される教材が開発されています。博物館では、展示物の横に設置された QR コードをスキャンすると、展示物が動き出したり、当時の風景が AR で再現されたりする体験が提供されています。QR コードは「情報へのリンク」から「体験へのリンク」へと、その役割を拡張しつつあります。