Qraft (クラフト)

ラテアートで QR コードを描く挑戦 - 実際にスキャンできるのか

ラテアートで QR コードは描けるのか

結論から言うと、手描きのラテアートで「スキャン可能な」QR コードを描くのは、ほぼ不可能です。ラテアートは、エスプレッソの茶色い表面にスチームミルクの白い泡で模様を描く技法ですが、QR コードに必要な精密な格子パターンを、液体の上にフリーハンドで再現するのは人間の手の精度を超えています。

QR コードの最小バージョン (21×21 モジュール) でも 441 個のモジュールを正確に配置する必要があります。ラテアートの名手でも、ハートやリーフ、白鳥といった有機的な形状が限界であり、デジタルな格子パターンは根本的に相性が悪いのです。

しかし、「ラテアートで QR コードを描いてみた」という挑戦動画は YouTube や TikTok で人気のコンテンツです。大半はスキャンできませんが、「QR コードっぽい何か」を描くこと自体がエンターテインメントとして成立しています。

フードプリンターなら話は別

手描きでは不可能でも、フードプリンター (食品用インクジェットプリンター) を使えば、ラテの表面にスキャン可能な QR コードを印刷できます。食用インクをカートリッジに充填し、コーヒーの泡の表面に直接印刷する専用機器が、カフェ向けに販売されています。

代表的な製品として、Ripple Maker (リップルメーカー) があります。カプチーノやラテの泡の上に、写真、テキスト、QR コードなどを数秒で印刷できる装置で、世界中のカフェやイベントで導入されています。印刷に使われるのはコーヒー豆の抽出液をベースにした食用インクで、味に影響を与えません。

フードプリンターで印刷された QR コードは、泡が崩れるまでの数分間はスキャン可能です。カフェの Wi-Fi 接続情報、本日のおすすめメニュー、SNS のフォローページなど、「コーヒーを飲む前にスキャンしてね」という軽い導線として使われています。

飲み物の上の QR コード - 世界のユニークな事例

コーヒー以外にも、飲み物の上に QR コードを載せるユニークな事例が世界中にあります。

ビールの泡: ベルギーのビールメーカーが、ビールの泡の上にレーザーで QR コードを描く技術を開発しました。泡の表面にレーザーを照射して一部の泡を消すことで、白い泡の中に茶色い液面が露出し、QR コードのパターンが浮かび上がります。スキャンするとビールの醸造過程の動画が再生されます。

抹茶ラテ: 京都のカフェでは、抹茶ラテの表面に QR コードを印刷し、スキャンすると使用している抹茶の産地情報や茶農家のストーリーが表示されるサービスを提供しています。抹茶の鮮やかな緑色と白い泡のコントラストは、QR コードの読み取りに適しています。

カクテル: ニューヨークのバーでは、カクテルの表面に食用インクで QR コードを印刷し、スキャンするとそのカクテルのレシピが表示されるサービスが話題になりました。「このカクテルが気に入ったら、自宅でも作れますよ」という粋な演出です。

なぜ「飲み物 × QR コード」が話題になるのか

飲み物の上の QR コードが SNS で話題になりやすい理由は、「意外性」と「儚さ」の組み合わせにあります。QR コードは通常、紙やスクリーンなど安定した媒体に印刷されるものです。それが液体の表面という不安定な場所に存在すること自体が意外であり、飲んでしまえば消えるという儚さが、写真や動画を撮ってシェアしたくなる衝動を生みます。

マーケティングの観点では、「飲み物の上の QR コード」は、商品そのものが広告媒体になるという点で優れています。看板やチラシは見てもらえるかどうか分かりませんが、目の前のコーヒーの表面に印刷された QR コードは、ほぼ確実に目に入ります。しかも、「スキャンしてみよう」という好奇心を自然に喚起します。

食べられる QR コード - お菓子とパンの世界

飲み物だけでなく、食べ物の表面に QR コードを印刷する事例も増えています。クッキー、マカロン、ケーキのデコレーション、パンの表面など、食用インクで QR コードを印刷できる食品は多岐にわたります。

結婚式の引き出物のクッキーに QR コードを印刷し、スキャンすると新郎新婦からのお礼メッセージ動画が再生される。企業のノベルティとしてロゴ入りマカロンに QR コードを添え、スキャンするとキャンペーンページに遷移する。こうした「食べられる QR コード」は、贈り物やイベントに遊び心を加えるツールとして定着しつつあります。

食とデザインの交差点に興味がある方には、フードデザインの書籍がおすすめです。食べ物を「見て楽しむ」視点から、新しいインスピレーションが得られます。