世界の国々であの模様はどう使われているのか - 日本・中国・インド・アフリカの事情
日本 - 発明国なのに普及は遅かった
白黒の四角い模様は 1994 年に日本で発明されましたが、一般消費者に広く普及したのは 2018 年以降です。PayPay がサービスを開始し、大規模なキャッシュバックキャンペーンを展開したことがきっかけでした。それまでの日本では、Suica や PASMO などの IC カード決済が主流で、模様を使った決済の必要性が薄かったのです。
現在の日本では、決済よりも「情報へのリンク」としての利用が目立ちます。レストランのメニュー、観光地の案内、商品の詳細情報、名刺の連絡先。日本人は模様を「支払い手段」よりも「便利なリンク」として認識している傾向があります。
中国 - 模様なしでは生活できない社会
中国は世界で最も模様が浸透した国です。WeChat Pay と Alipay の 2 大サービスが生活のあらゆる場面をカバーしています。屋台の焼き芋、タクシー、病院の支払い、公共料金、友人への送金。現金を持ち歩かない人が多数派になりました。
中国で特徴的なのは、模様が「身分証明」の役割も果たしていることです。健康コード (新型コロナ対策で導入) は、個人の健康状態を模様で表示し、施設への入場可否を判定するシステムでした。監視社会への懸念はありますが、14 億人の行動を管理するインフラとして機能した事実は否定できません。
インド - 10 億人の金融包摂を実現した UPI
インドの UPI (Unified Payments Interface) は、模様を使った決済で最も成功した事例の 1 つです。2016 年のサービス開始以来、月間取引件数は 100 億件を超え、取引額は年間 2 兆ドルに達しています。銀行口座を持たなかった数億人が、スマホと模様だけで初めて金融サービスにアクセスできるようになりました。
インドの成功の鍵は、政府主導でオープンな規格を採用したことです。特定の企業に依存せず、どの銀行のアプリからでも模様決済ができます。Google Pay、PhonePe、Paytm など複数のアプリが競争することで、サービスの質が向上し、手数料が低く抑えられています。
アフリカ - 銀行がなくてもお金を送れる
アフリカでは、銀行の支店や ATM が少ない地域が多く、従来の金融サービスにアクセスできない人が数億人います。ケニアの M-Pesa は 2007 年にサービスを開始し、携帯電話のショートメッセージ (SMS) で送金できる仕組みを構築しました。現在はスマホの模様決済にも対応し、ケニアの GDP の約 50% が M-Pesa を経由しています。
農村部の農家が収穫物を売った代金を模様で受け取り、離れた町の家族に送金する。学校の授業料を模様で支払う。こうした日常的な金融活動が、銀行口座なしで実現しています。テクノロジーが「銀行のない社会」に金融インフラを提供した好例です。
共通点と違い - 文化が技術の使い方を決める
4 つの地域を比較すると、興味深いパターンが見えてきます。共通しているのは「スマホの普及が模様の普及を牽引した」ことです。スマホがなければ、消費者が模様を読み取る手段がありません。違いは「何のために使うか」です。日本は情報リンク、中国は決済と社会管理、インドは金融包摂、アフリカは基本的な送金手段。
技術は同じでも、社会の課題が異なれば使い方も変わります。日本では「便利さの向上」、途上国では「生活の基盤」。同じ白黒の模様が、国によってまったく異なる役割を果たしている。技術の価値は、技術そのものではなく、それが解決する問題によって決まるのです。