Qraft (クラフト)

お札を QR コードリーダーで読み取ると何が起きるのか

日本のお札に QR コード印刷されていない

結論から言うと、日本の紙幣 (日本銀行券) には QR コードは印刷されていません。2024 年に発行された新紙幣 (渋沢栄一の一万円札、津田梅子の五千円札、北里柴三郎の千円札) にも、QR コードは採用されませんでした。

紙幣の偽造防止技術としては、ホログラム、すかし、マイクロ文字、特殊インク (角度によって色が変わる)、凹版印刷 (触ると凹凸がある) などが使われています。QR コードは偽造防止技術としては採用されていないのです。

理由はいくつか考えられます。QR コードは誰でも簡単に生成できるため、偽造防止の役割を果たしにくい。また、QR コードを読み取るにはスマートフォンが必要であり、紙幣の真贋判定を「スマートフォンを持っている人」に限定するのは現実的ではありません。

QR コードが印刷された紙幣は存在する

日本のお札には QR コードがありませんが、世界に目を向けると、QR コードが印刷された紙幣は実在します。

世界初の事例はナイジェリアです。2014 年 12 月に発行された独立 100 周年記念の 100 ナイラ紙幣に QR コードが印刷され、発行当時はスキャンするとナイジェリアの 100 年の歩みを紹介する記念サイトにアクセスできました。紙幣そのものの偽造防止ではなく、「記念コンテンツへの入り口」としての QR コードです。

また、記念紙幣や限定紙幣に QR コードを印刷する国もあります。スキャンすると、その紙幣の発行背景や記念イベントの情報が表示される。コレクターにとっては、紙幣の「付加価値」として楽しめる仕組みです。

お札をスマートフォンのカメラで撮影すると...

QR コードとは関係ありませんが、お札をスマートフォンのカメラで撮影しようとすると、面白いことが起きる場合があります。一部のスマートフォンやアプリでは、紙幣を撮影しようとするとシャッターが切れなかったり、警告メッセージが表示されたりします。

これは「EURion constellation (ユーリオン模様)」と呼ばれる、紙幣に印刷された特殊なパターンのおかげです。5 つの小さな円が特定の配置で印刷されており、画像処理ソフトやカメラがこのパターンを検出すると、紙幣の複製を防止するために撮影や編集をブロックします。

Adobe Photoshop で紙幣の画像を開こうとすると、「この画像は紙幣の可能性があるため、開けません」というエラーが表示されることがあります。これも EURion 模様の検出によるものです。QR コードではありませんが、紙幣に「見えない技術」が仕込まれているという点では、似た発想と言えるかもしれません。

将来、日本のお札に QR コードが載る可能性は?

キャッシュレス決済が普及する中、紙幣の役割自体が変化しています。将来、日本のお札に QR コードが印刷される可能性はあるのでしょうか。

可能性として考えられるのは、偽造防止ではなく「情報提供」の目的です。たとえば、新紙幣の肖像画の人物について、QR コードをスキャンすると詳しい経歴や業績が表示される。渋沢栄一の一万円札をスキャンすると、渋沢栄一の生涯と日本経済への貢献が分かる。紙幣が「動く教科書」になるイメージです。

ただし、紙幣のデザインは数十年に一度しか変更されないため、次の新紙幣が発行されるのは 2040 年代以降になるでしょう。その頃には、紙幣そのものが存在しているかどうかも分かりません。QR コードが紙幣に載る前に、紙幣がなくなる可能性もあるのです。

紙幣よりも硬貨の方が QR コードと相性が良い?

紙幣に QR コードを印刷するのは技術的に容易ですが、硬貨に QR コードを刻むのは難しいとされてきました。しかし、精密なレーザー加工技術を使えば、硬貨の表面に極小の QR コードを刻印することが可能です。

実際に、一部の記念硬貨に QR コードが刻まれた事例があります。スキャンすると、その硬貨の発行記念イベントの情報や、硬貨のデザインに込められた意味が表示されます。

硬貨の QR コードは、紙幣よりも耐久性が高いという利点があります。紙幣は折り曲げや摩耗で QR コードが読めなくなるリスクがありますが、金属に刻まれた QR コードは長期間にわたって読み取り可能です。コレクターズアイテムとしての記念硬貨には、QR コードとの相性が良いと言えるでしょう。

お金の歴史や仕組みに興味がある方には、貨幣の歴史に関する本がおすすめです。物々交換から電子マネーまで、お金の進化を辿る旅が楽しめます。