NFC タグ
読み: エヌエフシータグ
NFC タグは、NFC (Near Field Communication、近距離無線通信) チップを内蔵した小型のタグで、スマートフォンをかざすだけでデータを読み取れます。通信距離は約 10 cm 以内で、電源不要 (パッシブ型) のため半永久的に動作します。QR コードと同様にスマートフォンで情報を読み取る手段ですが、技術的特性とコスト構造が大きく異なります。
NFC タグの最大の利点は、カメラを起動する必要がない点です。スマートフォンをタグにかざすだけで自動的にデータが読み取られ、QR コードのようにカメラのピント合わせや照明条件を気にする必要がありません。暗所、雨天、手袋着用時など、QR コードのスキャンが困難な環境でも確実に動作します。一方、NFC なら偽造されないという理解は誤りです。市販タグの多くは NDEF 領域を書き換えられるため、内容を読み出して別のタグへ書き込めば同じ動作をするタグを作れます。複製への耐性を得るには、タップごとに AES 鍵で使い捨ての認証コードを生成し、サーバー側で照合できるタグ (NTAG 424 DNA など) を選ぶ必要があります。
一方、コストは QR コードと比較にならないほど高くなります。NFC タグは 1 枚あたり 30-100 円程度で、QR コードラベル (1 円未満) の数十倍です。数万枚を配布するチラシやパッケージには不向きで、高付加価値の製品 (高級ブランド品、医薬品) や繰り返し使用する場面 (入退室管理、交通系 IC カード) に適しています。QR コードと NFC タグは競合ではなく補完関係にあり、用途に応じた使い分けが重要です。
運用前に確かめておきたい制約が二つあります。一つは貼る面の材質です。金属面はタグの背後で接地面のように働いてアンテナの効率を落とし、チップを動かす電流を作れなくするため、金属の容器や筐体に普通のタグを直接貼ると読み取れません。フェライト層で金属を遮蔽した金属面対応タグを選ぶか、数ミリから 1 cm 程度の隙間を空けて貼ります。もう一つは読み取る端末側の条件です。アプリを開かずかざすだけで反応するバックグラウンド読み取りは、iPhone XS / XR 以降 (iOS 12 で導入) が対象で、再起動後に一度でも解錠していれば、画面が点いている間はロック中でも動作します (ロック中に読み取ると、処理の前に解錠を促す通知が表示されます)。Android も解錠中はタグを探しますが、設定で NFC を切っていれば反応しません。読み取り位置は機種によって背面の上部や中央と異なるため、案内文にはアイコンだけでなく「端末の背面をゆっくり近づけてください」のような動作の指示を添えると迷いが減ります。なお、量産の前に数枚のサンプルを実際に貼る面で試し読みし、材質と機種の影響をまとめて確かめておくと、あとからの貼り直しよりずっと手戻りが少なくて済みます。