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汚れても読める秘密 - 壊れたデータを復元する技術のすごさ

30% 壊れても復元できる驚きの技術

白黒の四角い模様の一部をマジックで塗りつぶしても、スマホで読み取れることがあります。模様の面積の 30% が破損しても元のデータを復元できる場合があるのです。これは「誤り訂正」(エラーコレクション) という技術のおかげです。

誤り訂正は、模様だけでなく、CD、DVD、Blu-ray、人工衛星との通信、深海探査機のデータ送信など、あらゆるデジタル通信で使われている基盤技術です。データが壊れる可能性がある場面では、必ずと言っていいほど誤り訂正が組み込まれています。

「予備のデータ」を一緒に送る発想

誤り訂正の基本的な考え方は、とてもシンプルです。本来のデータに加えて「予備のデータ」を一緒に格納しておき、本来のデータが壊れたときに予備のデータから復元する、という仕組みです。

身近な例で考えてみましょう。友達に「明日 3 時に駅前集合」とメッセージを送るとき、電波が悪くて一部が欠けるかもしれません。そこで「明日 3 時に駅前集合。繰り返します、明日 15 時に駅の前で待ち合わせ」と送れば、前半が欠けても後半から内容を復元できます。これが誤り訂正の最も単純な形です。実際の技術はもっと数学的に洗練されていますが、「予備を持っておく」という発想は同じです。

4 段階のレベル - どれくらい壊れても大丈夫?

白黒の模様には、誤り訂正の強さを 4 段階から選べます。レベル L は 7% の破損まで復元可能。レベル M は 15%。レベル Q は 25%。レベル H は 30%。数字が大きいほど多くの破損に耐えられますが、その分だけ予備のデータが増えるため、模様全体が大きくなります。

たとえば、同じ URL を格納する場合、レベル L なら 25×25 マスで済むところが、レベル H では 33×33 マスが必要になることがあります。つまり「壊れにくさ」と「模様の大きさ」はトレードオフの関係にあります。名刺のように小さく印刷したい場合はレベル L か M、屋外の看板のように汚れやすい場所ではレベル Q か H を選ぶのが一般的です。

ロゴを埋め込めるのも誤り訂正のおかげ

企業のロゴが中央に入ったおしゃれな模様を見たことがあるでしょう。ロゴの部分は模様のデータが完全に潰れていますが、それでも読み取れるのは誤り訂正のおかげです。ロゴが覆う面積を誤り訂正の許容範囲内に収めれば、残りの部分から元のデータを復元できます。

ロゴを埋め込む場合は、誤り訂正レベル H (30%) を選ぶのが鉄則です。ロゴが模様の面積の 10-15% を覆うとすると、残りの 15-20% が汚れや傷に対する余裕になります。レベル M (15%) でロゴを入れると、ロゴだけで許容範囲を使い切ってしまい、少しの汚れでも読み取れなくなるリスクがあります。

誤り訂正は宇宙でも活躍している

誤り訂正技術が最も過酷な環境で活躍しているのは、宇宙通信の分野です。NASA の探査機ボイジャー 1 号は、地球から 240 億 km 以上離れた場所からデータを送信しています。この距離では信号が極めて弱くなり、宇宙線によるノイズでデータが頻繁に壊れます。

ボイジャーが使っている誤り訂正技術は「リード・ソロモン符号」と呼ばれ、白黒の模様にも同じ技術が使われています。1960 年代に開発されたこの技術が、60 年後の今も宇宙探査とスマホの両方で現役で使われているのは、数学の普遍性を示す好例です。身近な模様の中に、宇宙技術と同じ数学が隠れている。そう考えると、少し見る目が変わりませんか。