デジタル遺品
読み: でじたるいひん
デジタル遺品とは、故人が残したスマートフォンのデータ、SNS アカウント、クラウドに保存された写真や文書、暗号資産、サブスクリプション契約など、デジタル形式の遺産の総称です。遺族がパスワードを知らずにアクセスできない、存在自体に気づかないといった問題が社会的な課題となっています。
QR コードは、デジタル遺品の管理と故人の記憶の継承に新しい可能性を開いています。墓石に QR コードを埋め込み、スキャンすると故人の写真、経歴、家族へのメッセージを閲覧できる「QR コード墓石」を採用する例も現れています。物理的な墓石のスペースには限りがありますが、QR コードのリンク先には無制限の情報を格納できます。
終活 (生前整理) の文脈では、どのサービスにアカウントがあるかという所在の一覧だけを書き残し、パスワードや秘密鍵そのものはパスワードマネージャーの緊急アクセス機能、信託契約、封をした書面の預託といった、開封の条件と記録が残る手段に委ねるのが安全な作り方です。QR コードは印刷された模様を誰でもそのまま読み取れる公開の記号であり、暗号化して格納しても復号鍵は別経路で渡さなければならないため、ログイン情報そのものや、その保管場所を指し示す用途には向きません。なお、ここでいう「デジタル遺言」は資産の所在を家族に伝えるための覚書であって、民法が定める要式 (自筆証書遺言・公正証書遺言など) を満たす遺言書とは別物であり、それ単体では法的な効力を持ちません。QR コードは、物理世界とデジタル世界をつなぐ架け橋として、人の記憶を次世代に伝える役割も担い始めています。